◆平塚柾緒編著 ◆1995年発行 ◆定価2,400円 遠く侍の時代は別にして、日本が係わった明治以降の戦争は中国を抜きにして語ることはできない。明治27年からの日清戦争はもちろんであり、明治37年からの日露戦争も相手はロシアであったが戦争の舞台となったのは中国大陸であり、その原因も中国における日露の利害の衝突にあった。大正に入り、ヨーロッパで第1次世界大戦が勃発し日本は当時の敵であったドイツの祖借地、中国の青島をいち早く占領する。昭和に入り、軍事立国を目指して着々と軍事力を増強してきた日本はついに領土と資源獲得が日本民族の生き残る道だとして満州事変を起こし、満州国という傀儡国家まで造ってしまう。このように日本の近代史は常に中国問題とともに歩んできた。 過去の戦争に「侵略」の2文字を使うことに抵抗を示す人達が必ず口にする言葉に「それではあの戦争で死んでいった英霊達が浮かばれない」というのがある。また「あの戦争がどんな戦争だったか、当時のワシラは知らなかった。ただ戦場ではこちらも撃たなければ相手に撃ち殺されてしまうから撃ちまくったよ。よく映画や本なんかでは死ぬ時に『天皇陛下万歳!』って言って息を引き取ったなんてあるけど、ワシは聞いたことがなかったな。たいていは『かあちゃ〜ん』と母親や女房のことをつぶやいてしんでいったな」この写真集にはそうした日本兵の最期のカットは1枚もない。残されていないからだ。戦時中の日本軍は銃後の国民が「聖戦」に疑問を持ったり戦意を挫くような写真は事前検閲で総べて没収してしまったからである。 朝鮮併合に続く満州事変、支那事変、そして米英蘭と戦った太平洋戦争で日本が占領した東南アジアや南大平洋の各諸島への派兵は明らかに侵略以外のなにものでもない。ちなみに辞書で「侵略」を引いてみると「ある国が他国の主権・領土・政治的独立を侵すため武力を行使すること」とある。日本の韓国や中国への武力進出がこの辞書の説明にある行為に該当しないのだろうか。どのような文書や資料を開いても韓国や中国、東南アジアの国々から「日本軍を招聘したい」と言ってきたという記述は見当たらない。日本側が一方的に進出していったのである。この一方的進出こそが辞書にある「侵略」行為に他ならないのである。先頃の国会決議では「欧米諸国だって日本より先に侵略してたじゃないか。何も日本だけではなかったのだ」と読み取れる内容もある。それは事実であろうが、だからといって日本の行為が正当化されることはないし免罪されることにはならない。 ◆D・ジョ−ンズ著 ◆昭和57年発行 ◆定価1,000円 本書は第2次世界大戦における日本の敗戦を決定的にしたサイパン島陥落の後、同島を占領したアメリカ軍の大軍を向こうに回してゲリラ活動を続けた大場隊の軌跡を小説化したものである。著者はあとがきでこういっている「私は今日の日本において1945年以降に生まれた人達の間であの戦争について余りにも知られていないことが残念でこの小説を書いた。何故なら、その世代の人達の多くは戦争のことをいうのに恥じる感覚があること。そしてその恥じの感覚は事実に基づいたものではなく知識の欠如に基づいたものでした。この人達は自分達の父や祖父や叔父達が自分達の国を守るために戦って精神について何も知りませんでした。もっと驚いたことは父達がしたことに何の尊敬も払っていないことです。私はこのことをとても残念に思います。日本の兵隊はよく戦ったのです。彼等は世界の戦士達の中でも最も優れた戦士達でした。彼等は自分達の国のために生命を捨てることを恐れませんでした。」といっている。 本に書かれた大場大尉も「実際の我々の洞窟抗戦の生活はもっと暗く不衛生きわまりなく陰湿で、こんなに勇ましく米軍を手玉にとったようなことだはなかった。しかし米軍からパンを盗んできたことも、大掃討があったときのことも、堀内一等兵の活躍や数々の戦闘も、野営地の中で神憑かりになる兵隊が現れたことも、全て事実である。その意味では我々のゲリラ戦の経過がこれほど具体的に描かれたこと今までない。何故なら我々が書いたら自分等のことはもっと控えてしまうだろうし、他の人のこともこうは書けなくなる。そういう意味では、アメリカ人だからこそ、そしてサイパンで我々と戦った敵だからこそ書けた小説ということになるのだろう。この本がどのように読まれるかについては私には懸念がある。しかしこの本がかつては敵同士だった私達の戦後の長い交流を経て、敵の目で書かれた我々の戦いの記録であることは間違いない」といっている。この本の最後はこんな文章で終わっている。「1945年12月1日午前9時、実に512日にわたって自分達を出し抜き、あるいは裏をかいて我々を翻弄し続けてきたこの男と私は今、サイパンでの長い戦いを止めようとしている…。ルイスは右手を下ろすとその日本の英雄が差し出す軍刀を受け取るために両手を伸ばした。」と。 #
by tomhana190
| 2010-03-13 09:40
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人生の御負け
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