秋になりようやく待ちに待った新企画も続々登場するはこびとなった。 なったのはいいんだがこれら書くにあたって、私にはちょっとした心積りみたいのものがあった。 それは我が家に眠っている、かれこれ10年程前に何気なく買った『元禄御畳奉行の日記』 というの本の存在だ。本の扉には「尾張徳川家に秘匿されてきた『鸚鵡籠中記』という 希有の日記がある。元禄に生きた酒好き女好きのありふれた侍が当時の世相を 赤裸々に書き留めた。泰平の世の可笑しな武士たちと貧窮に喘ぐ庶民など滑稽と悲惨が 渦巻く元禄の真の時代像が浮かび上がってくる」とある。 日記の中に出てくる殺人や心中の現場が今も特定できるなら「古地図から見える風景」の 記事作りにも充分使えると高をくくっていた。しかしこの本読み易い反面、 日記の絶対量が少ないことがちょっと気にはなっていた。それでこの際、思いきってM美と一緒に 鶴舞図書館に行って原文というべき『鸚鵡籠中記』を借りてきて補おうと思った。 借りてきた本は分厚い本でしかも4册もあった。しかし発想は良かったんだが結果がいけない。 いざ事務所に帰って内容を確かめようとして愕然としてしまった。 本の内容がチンプンカンプンで、さっぱり要領がつかめない。それというのも、 原文は漢文で書かれていたり和文の個所でも当て字や特殊な語彙・語種が ひしめき入り混じっているという代物。例えば財布のことを「宰府」と書いたり、 天の川と書けばいいのに「銀漢」と言ったり、隠居願いを「乞骸骨」という私が理解できない 皮肉な表現もあり、全くのお手上げ状態。自分の無知・無学がトコトン身に滲みたんであります。 それでこの本、借りた2週間のあいだただ事務所にオイテアルダケ。 これではどうにもならんとばかり鶴舞図書館に2週間に1度、郷土の本コーナーに 本を飽きずに借りに行く日々が続いてるという訳なんです。 それと、私が読書感想文を書くなんて柄でもないが、私のことだ「名古屋巡礼記」と同じように 徐々に名文も閃くだろうと今からワクワクしている次第です。 昭和57年発行…定価3,000円 この本の著者小寺慶昭氏は何と『狛犬学事始』の著者ねずてつや氏本人だった。 ということは例によってデータの羅列でこの本そんなにお薦めの本ではない。 狛犬だけにとらわれ過ぎて、狛犬のあった神社とか氏子である近所の人達との交流とか 神社との心の交流がまるでない。人と狛犬との係わり合いの中に何か面白い話を 期待したのにまったくの無駄であった。 水谷盛光著:昭和54年発行…定価980円 筆者は名古屋市の元職員。1部:名古屋城と城下町では「仏郵船二ール号遭難事件覚書」と 「名古屋城存置と陸軍大佐中村重遠」という今まで聞いたこともない話があり結構収穫があった。 3部:青松葉事件では幕末の尊王攘夷の争いが尾張藩でもあった話を詳細に。 4部:名古屋人気質では如来宗「きの」の素描ではそんな教祖がここ名古屋にいただなんて ちょっとビックリ、ソコソコ面白かった。しかしこの本、一言でいうなら 一郷土史家のマニアックな知識の自己満足といった感じがプンプン匂う。 「自分はこの足で稼いでいます」とこれ見よがしのところも気に食わない。でもこの作者の、 知らないことは何が何でも探してみせるという一途な努力には表彰状もんと言っておこう。 芥子川律治著:昭和54年発行…定価2,000円 この本は何かの本の参考文献に書いてあったので借りてきた。 そうしたら100%『鸚鵡籠中記』の内容だったので驚いてしまったという話。 しかし、私も含めてこの本の存在を知ってる人はきっといないだろうと思う。 それに比べて中公新書の『元禄御畳奉行の日記』の方はHPで調べても254件もある。 ちなみに『尾張の元禄人間模様』の方は9件だけ。この本がA5判590頁の立派な本として 中日新聞社から出版されたのは1979年のこと。それから5年後に作家の神坂次郎氏が 『元禄お畳奉行の日記』というタイトルで出した。こちらの方はさすがに時代小説の名手だけあって 現在でもかなり売れているようである。ために芥子川さんの本が忘れ去られてしまったのは いかにも残念だと思う。内容的に見ると『尾張の元禄人間模様』の方が 私的には断然上なんだけど大手出版社の陰謀に遇って闇討ちされてしまった感じだ。 余談だが『元禄お畳奉行の日記』の参考文献に『尾張の元禄人間模様』が 何故か載ってないようなんだが、これって作家の良心かね。 #
by TOMHANA190
| 2005-12-21 16:14
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人生の御負け
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