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私の読書感想:13

戦争には必ず裏側がある
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戦争書籍12:『歴史から消された兵士の記録
◆土井全二郎著 ◆1997年発行 ◆定価2,000円

この本はオブニバスで書かれている。著者曰く「多くの戦史が発刊されている。個々の部隊の足跡にしても、師団史や連隊史といったものである程度はフォローすることはできる。しかし、将兵一人ひとりが体験した個々の生の事象や思考を掴むには困難がある。本書ではそうした刊行書から漏れている、あるいは既に埋没しかけている将兵の視点から見た戦争の記録の発掘に主眼を置いた…」とある。目次を見ると「無名戦士の墓標」「ガダルカナルに果つ」「ソロモンの海で」「ラバウル、もうひとつの戦い」「兵士もまた人間なり」「砲声とどろく中で」「戦火の彼方から」「沖縄特攻艦隊出撃す」「特攻隊この一戦」こんな内容だった。

その中にこんな話がある。曰く「連隊は激戦続くアウステン山陣地を死守していた。陣地からは飛行場がよく見えた。だが、その頃になると日本軍は守勢一方。とてもじゃないが飛行場奪還どころではなかった。もう一つの大敵、飢えとの戦いが本格的に始まっていた。伊藤分隊には連隊本部と大隊本部との有線電話を確保する任務があった。連日のように撃ち込まれる米軍砲撃により電話線がズタズタになってしまう。それを陣地から出て毎日点検補修しなければならない。しかし敵から丸見えだ。危険な任務だった。だが、ただひとつ余得があった。谷間の水場に友軍将兵の死体が一体放置されていた。水を求めここで力尽き果てたものと思われた。半ば腐乱している。そばへ寄るとハエが舞い上がり、5〜6匹のトカゲがちょろちょろと逃げ出す。私の狙いはこのトカゲである。長さ10〜15cmぐらいで日本のトカゲと変わらない。死体のハエやウジ虫を狙って寄ってくるのである。そいつを私がまた狙うという訳である。トカゲは伊藤と分隊員のための貴重な食糧となっていた。その内、もう取り尽してしまったのか、トカゲの姿も見えなくなってしまった。代わって、私にもハエがぶんぶん飛んでくるようななった」と。

またこんな文章もあった。曰く「半年間に及んだガ島戦も終結の時を迎えた。3万を数えた日本軍は今や1万ちょっとまで消耗していた。そして撤退作戦は奇跡といわれたほど見事に成功した。だが、ガ島攻防戦はこれで幕を引かれた訳ではなかった。全軍が撤退準備に取りかかり一斉に乗船を開始したその時、なお島に居残り最後の戦線を支えよという命令を受けた必死の隊がいたのである。それは1人では動けない病弱兵、負傷兵で組織された患者隊だった。総後衛隊長の松田大佐は歩行困難な兵の数を調べさせている。届いた報告では128名ということだった。そこで歩けない兵は陣地を死守して抵抗を続けよ。敵が間近に迫ったら毒薬の昇コウ錠を飲んでいさぎよく自決せよ、という命令を出している。問題はまだあった。これらの残置隊の指揮官をどうするかということだった。松田大佐は迷った。

その時、宮野中尉(第124連隊第1大隊第1機関銃中隊第3小隊長)が手を上げた。宮野中尉は実は米国生まれだった。英語のほかスペイン語も達者だった。アメリカ流の自由主義の持ち主だった宮野中尉は敵の圧倒的物量作戦を前に、なおも銃剣ひとつの白兵戦を怒号する日本軍の精神主義に疑問を持つまでになっていた。まして、今や周囲は動けぬまでに衰弱し切った大切な兵ばかりなのだ。すでに十二分に義務を果たした者ばかりなのだ。宮野中尉はいきなり立上がり叫んだ「アイ、サレンダー」。その時、日本兵の突然の出現に恐怖のあまり正面の米兵が反射的に自動小銃の引き金を引いた。米軍の記録によれば日本軍撤退後、約300名の捕虜を集め得たが、全員重傷患者で半死半生だったと、だけある」読んでて悲しくなってきた。

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戦争書籍13:『ルソンの挽歌
◆江崎誠致著 ◆1985年発行 ◆定価1,200円

この本はいわゆる戦争小説、戦記物の寄せ集めだ。読物としては面白いのかもしれないが脚色が多くてどこまでが本当の話しでどこからが作者の作り話か判らず今ひとつ真剣には読めなかった。一応目次を書き出すと「比島軍司令部の山下奉文」「空しき転進」「蜂の巣」「繁みの中」「塹壕の女」「気をつけ、女子軍属」「ルソンの挽歌」「真珠湾の九軍神」「将軍と特攻隊」「特攻隊回天」という具合。ただ、その当時の人々が守らなければいけないと思っていた感覚や信念みたいなものは何となく判った気がした。
# by TOMHANA190 | 2005-12-21 16:57