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GOB備忘録:36

 ライブと私の備忘録[25]



私にとってマーク・ベノという人は私の長い音楽人生の中でも、
結構初期の頃にその存在を知ったミュージシャンのひとりだったんじゃないかな。
まだユッカへも通っていない頃の話。
5年ぶりに東京から名古屋へ戻って来た頃、レコード屋で「アサイラム・クワイア2」
というアルバムを見つけたことがそもそもの切っ掛けだった。
そして何も考えずに買っていた。
中身は何かというとレオン・ラッセルとマーク・ベノとのユニットアルバムで、
スタジオミュージシャン達が自分勝手に作ったソウロウ的な、
こうイッチャア何だが、決して出来のいいアルバムではなかったが。
(歌は全曲レオン・ラッセルが担当してたと記憶している)
当時の私はアルバム「カー二−」を聞いて以来、レオンを追いかけていたので、
彼の出ているアルバムは一応全て要チェックにしていた。
このアルバムもそんなつもりで買ったものの1枚。
しかし、もうひとりのマーク・ベノの方はそれこそ何も知らなかった。
突然唐突に出てきたという感じだった。
彼がこのアルバムで何をしたのか判らないままに、しかし名前だけは残った。

それから、しばらくしてレコード屋でマークのアルバム「雑魚」を見つけた。
期待はしていなかったが、とにかく買ってみた。
レオンとは似ても似つかぬ線の細い声、どちらかとナヨナヨっとして
掴みどころのない甘ま甘まの坊ちゃんボーカルだった。
ブルースも歌うが彼の声ならバラードやカントリー系の方がピッタリだと思った。
一言でいうと、パンチはないが叙情たっぷり、日本人受けするアルバムだった。
しかし、次に出た「Ambush」を聞いて更にたまげた。
あんな声だが、やりようによっては充分聞けるようになると思った。
その中から「Donut Man」というラグタイム風の曲をマスターしようと
コードを探して練習したが、遂にライブで御披露とはいかなかった。

マーク・ベノ[Marc Benno]

シンガー・ソングライターというよりホワイト・ブルースマンといった方がしっくりとくる。憂いを秘めた声で呟くように歌い、自身の弾くギターから渋いオブリガートを連発。決して派手ではないがブルース・フィール溢れる歌声&演奏はワン・アンド・オンリーといっていい。テキサス出身のマーク・べノは60年代L.A.に上京。レオン・ラッセルとのユニット、アサイラム・クワイアを組むものの、成功するには至らず、ソロ・アーティストへ転身する。そして70年にデビューを飾った彼の傑作は何といっても2nd『雑魚』(71年)だろう。ボビー・ウーマック、ジェシー・エド・デイヴィス、クラレンス・ホワイト、ジム・ケルトナー、ニック・デガロという錚々たる面子をゲストに迎えたこの作品ではブルースをベースにR&Bやゴスペルといった南部のルーツ・ミュージックをスパイスに効かせたサウンドを展開。ブラック・ミュージックの高揚感とべノの持ち味である繊細さが合わさったホワイト・ブルースとブルー・アイド・ソウルの名盤となった。その後、2枚のアルバムを発表するが、いつからかその名前はミュージック・シーンで聞かれなくなってしまう。しかし、00年に『Sugar Blues』で突如復活を果たす。リラックスしたムードの中、肩の力の抜けきった歌唱を披露。また、レイド・バックした演奏も、耳に心地好い。

『雑魚』という邦題がなんとも印象的なマーク・ベノの1971年にリリースされた2nd。スワンプ好きには定番中の定番といえるほど認知されている名盤で「雑魚」なんてとんでもない!と言いたいくらいの「大物」アルバム。元々マークはレオン・ラッセルとアサイラム・クアイアーというユニットを組んでいた。しかし、個人的にはマークはソロのほうがいい。ファンキー&レイドバックしたサウンドにマークの甘めなボーカルがなんとも絶妙にマッチして聞く者を和ましてくれる。ゴリゴリのスワンプロックとは趣が異なるが、しっかりと地に足が着いた素晴らしいルーツ・サウンドを聴かせてくれている。曲によってはブルーズだったりカントリーだったりしているが全曲彼のオリジナルで、彼の音楽的なルーツを垣間見ることもできる。ジェシー・エド・デイヴィス、ボビー・ウーマック、ニック・デカロ、リタ・クーリッジなどなど書ききれないくらいの豪華なメンバーというよりも、当時の最先端な音の開拓者ともいえるメンツが大勢揃っていた。

『雑魚』というアルバムがどうのといっているのに、
サンプル音源では彼のアルバムがたった1枚しかないという。
これでは話のもっていきようがないが、ないよりましと諦めるしかない。

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「Franny」
スワンプミュージックという意味が今でも判らない。くにゃくにゃした歌い方がそうなのか。
「Put a Little Love in My Soul」
それともくにゃくにゃのギターの音がそれなのか。今でも意味が判らない。
「Before I Go」
この曲は彼のベストテークかもしれない。頼りない感じが女心をくすぐるのか。
「Good Times」
鼻にかかった女みたいな歌い方が彼のトレードマーク。私に真似ろと言っても無理な話。
「Back Down Home」
女性コーラスにラフな演奏。この曲からは一世を風靡した70年代の歌という感じがした。
「Baby Like You」
たまには骨のあるところも垣間見せた彼。しかし、ホントにタマだった。

レオンとのユニットアルバム「Asylum Choir 2」を取り上げざろう得なかった。
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「Ballad for a Soldier」
余談だが、私が初めて歌ったブルースがこれ。今から聞くと何処がブルースという感じだ。
「Sweet Home Chicago」
こっちの歌の方がブルースらしかったが、その頃はてんで歯が立たなかったというのが本音。


昔、何処かのライブハウスで彼のプロモーションビデオを見て驚いてしまった。
彼は単なる白ブタのようにブクブク太った中年のオジサンだったから。
また、去年突然の日本公演も果たした、ネットでは好評のようでなによりと思った。
この続きは次回へ
by tomhana190 | 2006-06-05 07:08


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