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リハビリ日記:104

酒の話4

酒を楽しむことは人間の証明である、と私は思っている。
人類以外では何でも猿達も酒を作っていると聞き及ぶが、
だからといって猿公達が自分達の作った酒を楽しみ、酒の素晴らしさを通じて人生、
いや猿生の奥行きを深め、生きる歓びを高めたという話は当然ながら聞いたことがない。
人間だけが酒を楽しむことを知っている、と私は思っている。
そして、酒を楽しむということと、単に酒を飲むということとは、はっきり別物である。
私はあくまでそのことにこだわってきた。

私は酒を単なる刺激や興奮のイチ手段とは思っていない。
酒こそが人間を人間たらしめるものだと信じている。
だから「いかに飲むか」にこだわってきたのだ。
ある日、不意に、人生は有限であると気づいた瞬間から、
たとえグラス1杯の酒といえども、あだや疎かには飲みたくないと思い至る。
「この年、この月、この日、客を迎えてする茶の湯は
生涯中この一回の他にあらず…」と、戦国時代の茶人は言ったそうだ。
酒を飲むということも、その根本は同じ覚悟でなければならない。
一期一会の酒でなければならぬと思う。

単なる飲み捨ての酔いに任せる酒なら飲まない方がいい。
今、このグラス1杯の酒を心から楽しむことができたら、
もしそれが人生最後の1杯であっても断じて悔いることはない。
いつもそういう酒でありたいと思っていた。
酒を飲む上で常々思うことは絶対に他人に迷惑を及ぼさないこと。
常に身銭を切って、つまり自分が働いて稼いだその金で飲むこと。
そして、そのためにも自分自身、365日の辛い酒修行を
あだや疎かにしてはならないということだ。
ああだこうだと能書きを言っても所詮はじまらない。

では、そろそろ今宵も万障お繰り合わせの上、
いつものあの店へ繰り出して、辛い辛い酒修行といざ参ろうか。なぁ戦友諸君!
と思いつつ、静かに今日も家路に就く。

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昔、若い頃に飲んでいた酒といえば、サントリー・ホワイトだ。
旨い不味いの問題ではなく、経済的にこれぐらいの酒がちょうどよかったということか。
それにしても毎日飲んでいた。何はなくとも飲んでいた。恐ろしいほど飲んでいた。
自慢する気は毛頭ない。酒を嗜むことが性に合っていたそれだけ。
3日でボトル1本を軽く空けていた。空ビンがアパートの入口にうず高く積まれた。
ある時、ふと「1ヵ月にどれくらい飲むのかな」と思った。
そして、いつものように空ビンができると白いフタを外して真ん中に穴を空け、
使わなくなったギターの弦に差していった。
1ヵ月も経たない内にギターの弦が見えないくらい白いフタだらけになった。
阿呆らしくなって、そういうバカみたいなことは2度としなくなった。
サントリー・ホワイトとはサントリーが戦前から出していたウイスキーだ。
ラベルが白いので、バーなどでは通称「白札」や「白」として呼ばれていた。
私が飲んでいた頃はボトルキープでも1500円ぐらいじゃなかったのかな。
スコッチに比べるとお世辞にも高級酒というには程遠い酒だった。
しかし変れば変るもんで、今では5000円ぐらいするという話を小耳に挟んだ。
「クウ〜、高か〜」
by tomhana190 | 2006-04-29 07:56


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