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リハビリ日記:102

装具の話2

今日、初めて足に付ける装具を付けずに事務所まで行った。
私にとっては病気になってから5年目の快挙というか、素直な驚きだった。

救急車で担ぎ込まれた病院、国立N病院では気が付くと脳梗塞の後遺症である
左半身の麻痺で左手左足、身体の左側にあるものは自由が効かなくなっていた。
国立病院の規定なのか、ひとつの病院に3ヶ月しか入院できなかったので、
ひとつ目の国立N病院では痛みと自暴自棄との戦いで、リハビリどころの話ではなかった。
2つ目の病院、国立EN病院に転院してきてしばらくしてからだった。
PTのM先生から「今度、足の型を取るから。そうして自分の足にピッタリの装具を付けて
歩く練習を本格的に始めるから」と言われた。

私の場合、左足の自由が効かないため、
無意識のうちに左足に体重が掛けられなくなって右側に傾いていた。
そして驚くべきことに入院中に左右のふくらはぎの大きさが目に見えて違っていた。
(神経が麻痺している左足はこれが自分の足かと思うほどふくらはぎは細く力がない感じ。
それに引き換え右足は体重全体をこの足で支えるんだという感じで太くて立派だった)
更に左足の指を上げたり下げたりする指令が全然伝わらないため、
左足の指先が無意識のうちに下がって歩く時に何処かにつまずく恐れがあると言われた。
半身不髄で倒れると、慣れていないので起き上がるのにも一苦労だし、
何より不意に倒れる時、左側を守るどころかどうすることもできない自分がいる。
そのことの結果よりも、そういうことの不安でなおさら左足に体重が掛けられない。
悪循環が悪循環を呼んで、何でもない歩行訓練もままならないという感じだった。

しかし装具を付けて歩く練習(みるみる上達したと自分では思っていた)をしたら、
何とか杖を付いて歩けるようになった。
今では1日に10km(あくまで万歩計によるとの話)以上歩いても、
全然平気(翌日、装具を付けた足の方に痛みが出るが)だし、体力的には自信もある。
まぁ、それまでの自分の歩き方と比べたら身体の傾きといい全然ダメなんだが、
杖を付いてでも、身体が不器用に傾いていても、歩けるだけマシというもの。
そんなことで不平を言ったら、今度こそホントに神様からの罰が当たると思う。
しかし、装具を付けているといいことばかりではないのも事実。
装具を付けて履く靴の問題(ちなみに、装具を付けると28cmはないと履けない)がある。
それに、不自由な左手の問題もあって紐式やファスナー式はダメ。
スキー靴のようなマジックテープでガバッと閉じるような靴でなくてはならない。

ということで今年の正月、義父が近くのスーパーで該当する靴を見つけてきてくれた。
今まで履いていたリハビリシューズではいかにも病人の履く靴という感じだし、
雨が降ってきたら滑るわ濡れるわで全然ダメだったので新しい靴を履いた時は本心嬉しかった。
しかし、装具を付ける左足には丁度よくても、装具を付けない右足はガバガバ。
今は靴下2枚重ねて何とか履いているが、夏になったらそういう訳にもいかない。
そこで義父と一緒に、今度は27cm(ちなみに、病気前は26.5cm)くらいの靴を探しにいった。
運よく前に買った28cmの靴と同じメーカーの27cmがあった。しかし、色は同じではなかった。
靴の問題ばかりではない。装具自体も作ってから5年も経つとそこら中にガタがきている。
とにかくみすぼらしい感じで、装具を外すにも一目を気にする感じなのだ。
という訳で、私はいつか装具を付けないで歩いてみたいと思うようになっていた。
歩道橋の階段だって1段づつ交互に降りて来れるようになったし、
気は熟していた。

しかし、装具を付けないで歩くには大きな問題があった。
それは装具を付けないで歩く時、どうしても左足の足底が地面に平行に降りなくて
左足の外側から先に地面に着いて、それから内側が地面に着くというように傾くことだった。
だから、歩いていると自然にペタ、ペタと大きな音がすること。
この音に畏縮して身体の傾きや体重の掛け方全てがチグハグになってしまう。
でも今日、それらの思いを断ち切って装具を付けずに事務所まで来た。
不器用そうな歩き方だと人の目には写ったかもしれないけど、
また時間を掛けて一からやり直して行くしかない。
装具を付けないで歩くということは、自分にとって大きな1歩となると同時に
また1歩自信が付いたような気になった。
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街でペタ、ペタと足音が聞こえたら、私が来たと思ってください。
by tomhana190 | 2010-03-09 08:14


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