歴史のオマケ:33

狛犬/16

銭湯の花形は何といっても三助だ。つまり「流し」の男衆である。
男湯にも女湯にも褌ひとつで出入りが自由。番台の拍子木の音で男客か女客かを判断し、
湯を入れた桶を3つ用意する。この場所にも客の好みがあり、
特に女性は場所にこだわるから大変だ。客が湯から上がると垢すりか糠袋で
背中から腕を程よく擦り、湯を掛けて洗い流すと軽くマッサージ。これが済むと2〜3度
景気よく背中を叩く。パンパンというその音が湯屋中にこだましていかにも景気がいい。

しかも、けっして痛い程ではなく、浴客はこの時、陶然と目を細くする。
疲れが吹き飛ぶような感じなのだ。彼等はこの音を出すために自分の太股が
真っ赤に腫れ上がる程練習を積むのだそうだ。この陶然とさせる手際の良さで
祝儀の額が違った。特に町芸者ともなると、日頃客の上下を祝儀で判断する習慣があるから、
三助や他の男衆にも気前がよく、湯屋の上客といえば、そうした玄人筋の女性であった。
そして、彼等は女体の群集の中にあってもまさにキビキビと働く。

それがまたひとつの魅力を作っているからもてないはずがない。
とりわけ若くて筋肉がキリッと締まった美男子なら、随分と祝儀があったそうである。
しかし、流しの三助になるまでには木拾いの下積みからスタートして、
10年以上の歳月が必要だった。木拾いの次には釜焚きがある。いかに木っ端を節約して
焚くかが要領だが、この時、木拾いの役がいかに大事だったかを改めて知ることになる。
それを卒業すると、ようやく洗い場に入って岡湯の温度調節やら浴客に湯を配分する役がつく。

そして客の要求に応じて岡湯を汲み出してやるのだが、混雑してくると岡湯が不足してくる。
だから客は岡湯口に桶を並べ、その前にしゃがみ込んで汲み湯を待つことになる。
そうなると男湯も女湯も湯汲番から丸見えだ。思わぬところを見てしまう場合もある。
しかし、そうしたことに少しでも動揺してはならない。その間、湯の温度の調節はもちろん、
浴客の混み具合、洗い場の様子にも気を配る必要があり、女湯を覗いて恍惚とする程
呑気な職場ではない。だから、この湯汲番にはカなりの年季が必要となる。

かくしてようやく1人前の三助となるのだが、この三助の仕事は端で見る程楽ではなかった。
女客の背中を流すのはいいとしても、閉店後の浴槽の始末、洗い場の掃除がある。
特に洗い場の板には湯垢が付いて滑り易く、浴客があわれもなく転ぶことがある。
そのためにまず砂をまき、伸子を束にして床を擦るのだ。
伸子とは竹ひごのようなもので、この音が夜のしじまを破って湯屋から聞こえてくると、
江戸の一日もようやく終わったという感を深くする。

しかし、彼等の仕事はまだ終わらない。翌朝起き抜けに一番風呂を目指す客のための
用意をしてから、ようやく寝につくのである。彼等の出身はほとんど越後、越中、越前で、
これは昭和の銭湯まで継続されていたようだ。豪雪地帯に生まれた彼等が
湯気でむせ返る湯屋で働くのも妙だが、それだけ辛抱強い性格が形成されていたのだろう。
また、そうした性格の故か、それとも赤裸々な女の生態を見飽きさせるせいか、
比較的身持ちが堅く、せっせと貯金に励む者が多かったという。この話の続きは次回にて。

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写真1
やたらコケというか菌に被われた狛犬。
これがこの地方の一般的な狛犬だった。
(京都府真布伎神社
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写真2
本堂の横にあった名もなき神社にコレはいた。
しばらくの間まじまじと眺めてしまった。
(京都府成相寺
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写真3
真布伎神社にあった狛犬とよく似ていた。
トカゲ系の顔つきをしていると思った。
(京都府住吉神社
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写真4
変った本殿の前にある狛犬にしては
代わり映えのしない普通の狛犬だった。
(京都府魔気(まけ)神社
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写真5
ケツ上げ式の狛犬もいるにはいたが、
よく見ると潰されたガマ蛙のような顔をしていた。
(京都府生身(いきみ)天満宮
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写真6
ヒヒのような体つき、顔も獅子らしくない。
言ってみれば可笑しなシロモノだということ。
(京都府智恩寺
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写真7
何がそう思わせるのか知らないが
この狛犬は一種独特のものだった。
(京都府籠神社
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写真8
これまたケツ上げ式の狛犬もいたが、
よく見ると潰された豚のような顔をしていた。
(京都府籠神社
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写真9
ここまで汚いと、ここの氏子達は何をしてるんだ
と、思ってしまう。どうでもいいけど何とかしろよ。
(京都府吉野神社
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by TOMHANA190 | 2006-02-01 18:36


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