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達人への道:2

地下鉄発掘:地下鉄名城線「金山」駅界隈

ここ地下鉄名城線「金山」駅は地下鉄名城線の駅であり地下鉄名港線の始発駅でもある。
またJR東海道本線と中央本線、名鉄名古屋本線が接続した駅、
その名も「金山総合駅」というのが正式名称らしい。元々はそれぞれ駅舎を構えて
(名鉄は少し離れた位置に「金山橋」駅を、JRは東海道線の「金山」駅を新設した)いたのだが、
1989年に開催された世界デザイン博覧会を契機に総合駅化された。
しかし、名古屋においてこの総合駅という名前はここだけ。地下鉄名城線とJR中央本線と
名鉄瀬戸線が接続している大曽根駅も、もちろん地下鉄東山線と桜通線、JR東海道本線と
中央本線と関西本線、名鉄名古屋本線、近鉄名古屋本線が接続している
名古屋の中心である名古屋駅ですら総合駅の名前はない。
金山だけ駅名に「総合」という文字をワザワザ入れたのか。そのセンスがギョウギョウしくて
私なんかは理解できない。さすが大いなる田舎名古屋の為せる技なのかな。
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写真は金山総合駅のメインストリート

そんな金山のランドマークとなっているのが1999年に完成した駅に
隣接した31階建ての金山南ビルだ。このビルには名古屋ボストン美術館がある。
知らない間にできたこの美術館、アメリカのボストン美術館との提携によってできた美術館。
展示品は全てボストン美術館からのレンタルによって賄った名古屋としては
一切所蔵品を持たないという異色の美術館なのだ。要は本家アメリカ・ボストン美術館にある
約50万点もの所蔵品が代わる代わるやってくるいわば神社の出店にみいなところなんだ。
ここまで読むと何だかとってもいい美術館のような錯角をしてしまうのだが、そ
うは問屋が卸さないのが世の常。何が問題かというと当然所蔵品がタダで借りられる
わけではない。名古屋側はアメリカのボストン美術館に対し寄付を20年間続けることを
契約書に明記しているらしい。ところが入場者数が少ないのか寄付の金額が膨大なのか、
その両方が重なり合っての結果なんだろうが当初の契約の半分、即ち10年間で寄付を
打ち切ることを検討しなければならないほどの状況らしい。ということは1999年に誕生したから
2009年までということになる。まだ検討段階なので今後入場者数が増加すれば、
また状況は変わると思うがそんなに甘いもんじゃないだろう。
またしても責任を取らない役人の垂れ流しにあって結果、
閉館に追い込まれてしまうんだろうな。行くなら今の内という話。
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写真はボストン美術館のある金山南ビル

名古屋ボストン美術館のある金山南ビルから目と鼻の先、金山新橋南交差点の南西カドに
「東・右=なごや、木曽海道 南・左=さや海道、津しま道 西・右=宮海道 左・北=なごや道」
と刻まれた道標が残っている。この道標は文政年間に建てられたもので
「街道」ではなく何故か「海道」と表記されている。もともと「東海道」「西海道」など
行政の単位として使われていた「海道」という言葉が次第に道路を表す言葉として
使われてきた過程が判っておもしろい。その交差点から200m程行くと“金山”の
地名の由来ともなった金山神社が表通りから1本入った閑静な場所にある
(木々が鬱蒼としているので誰でもすぐ判る)。熱田神宮修理の鍛冶職であった
尾崎善光という人が自分の屋敷内に金山彦神を勧請したのが起源といわれている。
また近くにある伊勢山中学校遺跡から5世紀前半のものとみられる非常に珍しい鉄挺
(鉄の半製品)が出土していることから、この辺りでは早い時期から尾張氏が鉄を生産し、
力を蓄えていたのではないかと考えられている。またこの神社、尾張鍛冶発祥の地とも
言われており現在も金属業者の信仰を一心に集めているとのこと。
境内にある大きなイチョウの木がとにかく圧巻だ。私が行った時はお参りする人もいなくて、
これ幸とばかり結構思いきったことをしようと思ったがこんな身体ではそうもいかず残念。
しかし拝殿の奥の方に木製の可愛い座敷狛犬の影がチラッと見え、
すかさず写真に撮ったんだが帰って来て事務所で確認するとブレていて定かでない。
まさしく幻の座敷狛犬となってしまっただワン。
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写真は佐屋街道の分岐点に立つ1821年製の道標

神社といえば、もうひとつ有名な神社がある。「金山」駅から北西に800m程行った所に
闇之森(くらがりのもり)八幡社というホラー映画に出てきそうな名前の神社がある。
この神社、昔から人々の話題に登るほどの有名な神社だったみたいで、
ここにある御手洗池には片目の鮒と尻切れ田螺の話が残っている
。話の内容はタワイもないことなので割愛するが他にも鎮西八郎と称せられた源為朝と
その子息である義次の不思議な話とか枚挙にいとまがない。そうしてココロ高ぶる思いで
訪れた闇之森八幡社であったが、想像と現実のギャップに「またなの!」の思いひと塩。
境内の大きさといい無造作に置かれた各種施設といい「神社をやれば何とかなるだろう」
と長年、漫然と営んできたソウロウのところと見た。これでは私でも後が続かない。
救いといえばココの拝殿前にいた狛犬。他のとは何かケイロが違うよう。
立派なんだが何か恐ろしい。ことの真実を調べようにも奉納年月が判読できなかったので
何ともいえずこれまた残念。まぁ「一度は訪れる価値のある神社だ」ということにしておこう。
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写真はちょっと珍しい狛犬

ある定まった月齢の夜に寝ないで遅い月の出を待つ行事(19夜待ち、23夜待ち、
26夜待ちなどが知られている)を月待ちというのだが、月の神である月天子の本地仏である
勢至菩薩やそれを含む阿弥陀三尊を本尊としてして祀る場合が多いという。
金山駅から150m程南に行った所にある大悲山観聴寺。ここにある月待供養碑は
1596年・1630年・1639年の銘のある3基の石塔である。この内1596年のものは
9月23夜の月待ち供養のために10人の領主が共同して建てたものであり
収穫祭的な意味もあるのであろう。1639年のものは庚申待ちの供養も兼ねている。
いずれにしろ月待ち信仰を碑石に表わしたものとして民間信仰を知るうえでの
貴重な遺産となっている。また、この寺院には月待ち供養碑のほかに室町時代につくられた
2体の鉄地蔵が安置されている。460年も前の鋳鉄の技術は極めて高く学術的にも
大変貴重なもので何でも県文化財に指定されているという逸品だ。
余談だが、近くには世界チャンピオンを2人(畑中清詞と薬師寺保栄)も輩出した
松田ボクシングジムというのもある。興味のある人はぜひ訪れてみたらいい。
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写真は月待供養碑と思われる石碑

秘仏として名高い性神信仰というのは性器信仰ではなく子孫繁栄を願う人々の
切々たる気持ちの現れであるという。天下の奇祭といわれる田県神社の祭りは
全国的に有名だが名古屋市内にも性器を祀るお堂があることを知る人は少ない。
金山橋の近く、俗に“沢の観音さん”で知られる妙安寺の門前にそれはある。
堂前に「道祖金勢大明神」のノボリが風にはためいている、はずなのに行った時は
何故か見当たらなかった。堅く閉ざされた扉の穴から薄暗い堂内をうかがうと
地蔵菩薩の後ろに有に1mはあろうかという道祖金勢大明神と刻まれた男根が
倫々と2本おっ立っている(別に他意はない)。道祖神は本来中国の道の神で村境に立って
悪疫の侵入を防ぎ、旅人の道中安全を守る神とされている。普通は男女双神像が多く、
男性性器を道祖神とする例は非常に珍しいとのこと。寺の西を堀川が流れ、
その眺望の良さから名古屋三景のひとつに数えられた妙安寺。
この立派な御神体は当初弁天堂に祀られていた。しかし祈願に訪れる男女で
その跡を絶たずといわれ、男女の異様な熱気と辺りをはばかる異体ということで
秘仏扱いにされ門前のお堂に閉じ込められてしまったという。
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写真はてなもんや三度笠に出てくるような秘仏堂の全景

「金山」駅というと大相撲ファンだった私はずっと昔ここにあった金山体育館のことを思い出す。
金山体育館は終戦直後、愛知県主催の国体開催に合わせて飛行機の格納庫の材料で
急遽建てられた建物だ。そしてその当時大相撲名古屋場所がここで開かれていた。
しかしこの体育館、冷房設備はもちろんなかったので設備と言えば各自持ち寄る団扇だけ。
暑い騒ぎなんていうもんじゃなく名前も名古屋場所ならぬ南洋場所とも言われていた。
1度だけ(確か小学生低学年の頃)名古屋場所を観にそこへ連れて行ってもらったが
暑いどころの騒ぎでなかった。拷問を受けるような、今だったら怒れて相撲どころの
話ではなかったのだが昔の人はとにかく我慢強かったんだな。40度を越す暑さの中で
一心不乱に応援していたのを思い出す。
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写真は金山駅にある身障者用トイレだがこの階段は何んのつもりだ!
作ればいいという問題ではない

【駅での一言】
地下鉄「金山」駅の南側の3基×2カ所あるエスカレーター(長く真直ぐ伸びているので上がりはそれほどでもないが下りは少々ビビル)を上がると総合駅らしく左右に名鉄、右側にJRの改札口がある。地下鉄駅構内には案内所や定期券売り場などがあり、小規模だが地下街もあり中には喫茶店・本屋などもある。また身障者用トイレも設置されてはいるがここは問題ありと見た。駅の北側には名古屋市民会館(ここにあの金山体育館が建っていた)があり地下の連絡通路から直接中に入ることが出来る。また、地上に出ることのできるエレベーターも1基あるにはある。設備もレイアウトもまずまずで高望みしていないから及第点をあげてもいいんじゃないかな。
by tomhana190 | 2010-03-13 09:02


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